私が大学へ通学する道中に、ブナコと大きく書かれた建物があります。
毎朝、「なんの会社だろう…」とぼんやりと思いながら通り過ぎていました。
そう、今回、この疑問を解消すべく取材に向かった先は、「ブナコ株式会社」です。
ブナコ株式会社は、日本一の蓄積量を誇る青森県のブナを有効活用するために、考案された製法を用いて国産のブナを使った木工品を製造している会社です。
この度、土手町にあるブナコショールームにて、舘山乃奈さんにお話を伺ってきました。
「木では無い木…?」
皆さんは、ブナという字を漢字で書けますか?漢字で書くと、「橅」。木では無い、と書く木なのです。ブナの木は水分を多く含むため、乾燥が難しいです。乾燥が十分でないと、ねじれや狂いが生じやすいので、建築には不向きです。まさに、木としてあまり使われていませんでした。伐採するしかなかったブナの木を有効活用出来ないかということで、ブナコの技術は開発されたと、舘山さんはおっしゃっていました。下の写真のように、ブナを薄い板状にすることで、十分に乾燥させることが出来、よくしなるという特性を生かして曲線を生み出しています。また、この工程は木を削る工法に比べて、使用する木材の量を1/10程度にまで減らすことが出来るといいます。
また、ひとつひとつ手作りということも大切なポイント。手作りとなると、ブナコを製作するのに特別な技術が必要なはず。後継者問題などがあるのではないかと、私は思いました。しかし、職人さんは30~40代が多く、女性もいらっしゃるといいます。自ら「ブナコを作りたいです!」と志願してくる人も。「木では無い木」から、作られるブナコにどんな魅力があるのか。その秘密を、探っていきましょう!
「デザインの秘密」
ブナコの作品は、その製法から、他の木工品では表現できないような独特なデザインをしたものが多いです。訪問したショールームには、素敵な音楽と共に、多くのブナコ製品が並べられていました。その中でも、惹きつけられたのがティッシュボックス。優しい曲線美と、ブナの美しい木目が印象的です。この製品は、グッドデザイン賞を受賞したそうです。また、頻繁にドラマのセットに使われており、一番最近の出演作品は、波瑠さん、伊勢谷友介さん、吉沢亮さんら出演の日本テレビ「サバイバル・ウェディング」です。実は、皆さんも知らないうちに、ブナコの作品をテレビで見ているかもしれませんね。
他にも、取材中に私たちを照らしていた灯りは、全てブナコのランプ。ショールームの天井から聞こえていた音楽は、実は近くに置いてあったブナコのスピーカーによるもの。天井に反射させて、空間全体に響き渡るようになっている造りだと聞きました。あらゆる所で大活躍のブナコ製品には、これらのような素敵なデザインに人気の鍵があるのです。
「海外での出会い」
ブナコの製品は、毎年、東京の展示会に参加していました。さらなる飛躍を狙うべく、フランスでも展示会に参加することにしました。海外でも評価が高く、デザイン性だけでなく、ブナを有効活用したという「環境に配慮した」という点が人気だったと言います。そして、国内だけでの活動では出会うことのなかった素敵なデザイナーさん達と出会うことになります。海外のデザイナーさんとコラボして商品を作ったり、外国の店にブナコのランプが使われるようになったり…。また、国内のお客様だけでなく、海外からの観光客もたくさんいらっしゃると伺いました。舘山さんは、「田舎の青森県から、世界へ発信できることがブナコの良いところ。」と教えてくださいました。いつも、私が通学中に見ていたブナコの工場から、世界へ羽ばたいている製品が作られていると思うと、とても驚きを隠せません。
「人との繋がり」
ブナコの社長さんの人脈の広さも、ブナコ発展の鍵を握っていました。人を介して繋がった西目屋村の村長さん。村長さんからは廃校舎活用の相談をされて、次第に、ブナコの工場として使わないかと誘われることになりました。それが現在の西目屋工場です。今では、西目屋工場にはカフェが併設されていたり、ブナコの製作体験を行っていたり、多くの活動が行われています。これらの活動を通して、白神山地の玄関である西目屋村において、観光拠点として貢献することを目標にしているそうです。人との繋がりが、その会社の方向性を左右することがあるのだなと実感しました。
「未来の…」
青森県の人に、工芸品といえば何か?と尋ねれば、多くが「津軽塗」と答えると思います。そんな中、「ブナコという答えが、多くなることが今後の目標。ブナという天然素材を使い、癒やしや居心地の良い空間を届けたい。」と、舘山さんは語ってくれました。私は、人との出会いを大切にして作られたブナコが、今後もっと、世間に知れ渡っていくべきだと感じました。
そして最後に、舘山さんに、私たち学生に向けてメッセージをもらいました。
「人との出会いは大事。色々な人と出会って、様々なことに挑戦してみてください。」
取材を通して、ブナコも、人との出会い、関わりによって広がっているのだと強く感じました。
私たちも、
世界へ飛び出して今まで知らなかった外国人の考えを聞いてみたり、
他人に自分をデザインしてもらったり、
人のために自分をデザインしたり…
色々なことに挑戦していきたいと改めて思いました。
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