あなたは教科書が使用されるまでにどのような過程があるか知っていますか。
文部科学省によると、そもそも教科書とは、正式には「教科用図書」と呼び、小・中・高等学校などの学校で教科を教える中心的な教材として、使われる児童生徒用の図書のことを指します。
実はこの教科書ですが、学校で使用されるまでに、
「著作・編集」(1年目)、「検定」(2年目)、「採択」(3年目)、の過程があり、
4年目の「供給」でようやく実際に、子供たちに使用されることとなります。
今回はその過程のなかでも、供給を担っている「青森県図書教育用品(株)」の代表取締役である今泉規史さんにお話を伺いました。
※取材はZoomを使って行いました。
●「青森県図書教育用品(株)」の事業
「青森県図書教育用品(株)」の事業は主に3つほどあります。
1つ目は、青森県教科書特約供給所として、青森県内の教科書取扱店を選定・契約し、学校へ教科書を届けるという公共的使命を担う事業です。学校教育の柱となる教科書が 1 冊も不足や遅滞することなく、手元に届くように最善の注意を払い取り組んでいます。
2つ目は、県内唯一の書籍流通卸センターとして、教科書だけでなく一般書籍や教材、地元出版社の書籍や青森県民手帳の取り扱いもしています。
3つ目は、弘前を中心に、「教科書取扱店」として学校へ外商し、授業に使用する教材、図書館の図書、その他消耗品などを納品し、地域の学校教育向上への支援・貢献を目指しています。また、学校の教育用品以外にも、英検・漢検・弘前検定などの検定事業の受付や開催も検定本部とやりとりしながら進めているそうです。
●仕事のやりがい
仕事のやりがいについて今泉さんは、「教育現場との深い関わりの中でもなくてはならない役割」「国の仕組みの中で教育現場に役立つ歯車のような立ち位置」とおっしゃっていました。私達がこれまで当たり前に使ってきた教科書は、私達の見えないところで企業の方々が動いてくださっているうえで成り立っているものなのだと実感しました。
●コロナでの影響
コロナの影響で出版社さんの所へ行くことのできない状況や様々なリスク回避の観点から「青森県図書教育用品(株)」でもテレワークを検討せざるを得ない状況になっています。しかし、テレワークを行う上での設備導入などの事業を継続するためには、やはりコストもかかり、支障がでないかなどの面が課題となっています。コロナの早い収束を望みつつも、まだどうなるか分からない今後の状況に頭を悩まされていました。
●今後の展望
急速なデジタル化によって教科書もデジタル化し始めていると今泉さんはおっしゃっていました。教科書のデジタル化によって、教育現場への影響だけでなく、これまでとはまた異なる面での競合が生まれるなど、変化している部分が多くあるそうです。しかし、今泉さんは「一部はともかく、全て紙がデジタルに変わることはないのではないか」とお話されました。データとして残すのにも限界があり、やはり「紙」として、物体として手元にあることが大切なのではないかと私は考えました。
また、今泉さんは「コアの事業範囲が狭いという部分に危険を感じ、新事業展開への意識を急速に植え付けられた」とおっしゃっていました。コロナという出来事で大きく変わっていく時代をどのように生きていかなければならないのかを、私達も考えるきっかけとなりました。
●学生へひとこと
今泉さんは、実際の経験から、「学生時代の経験や人との関わりが必ず役に立つ」ことや、「今直面している問題に向き合って将来を見据えて生活することが重要」であるとお話してくださいました。今学んでいる授業とは直接的には関係なくとも、必ずどこかで結びつきがあり、何事も大切であることを私達に伝えてくださいました。
私達が教育を受けるにあたって必要不可欠な教科書は、今後どのように進んでいくのでしょうか。急速なデジタル化が進む中で、教科書は紙とデジタルどちらが教育を受ける側にとって良いのか、などを考えるきっかけともなりました。また、今泉さんがおっしゃってくださったように、人との関わりや経験などといった私達が「今しかできないこと」を今以上に大切にすることが重要であると改めて思う取材でした。
(2021/04/15 取材)
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